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2016/07/02

『呼吸によるマインドフルネス』

久しぶりに、本を紹介してみましょう。

ブッダダーサ比丘
『呼吸によるマインドフルネス』 (サンガ)

副題が
「瞑想初心者のためのアーナーパーナサティ実践マニュアル」
とあります。
Photo

もともとは、タイ語で行われた瞑想セミナーの講義を採録して、
それを英訳した書

Buddhadāsa Bhikkhu, Mindfulness with Breathing :
A Manual for Serious Beginners,1997

を、和訳したものです。


ブッダダーサ比丘の名前は、

ブッダのダーサ(奴隷、しもべ)

という意味で、なかなかすてきな名前です。

和訳は、浦崎雅代氏と、星飛雄馬氏のコラボで
出来上がっています。


タイ語や英語やパーリ語など、諸言語が入り交じって
翻訳はご苦労があったと思いますが、
そういうことを乗り越えて

ブッダダーサ比丘の、すばらしさが、光ります。


文字通り

ブッダのしもべ

に徹しているような、趣きが漂いながら
なおかつ
現代にしっかりと息づく解釈が、うならせます。


       ◇◇◇


読んでみて、いろいろ、「目から鱗」状態でした。


シンプルにいうなら

ブッダダーサ比丘のねらいは

「アーナーパーナサティ(入出息念経)」の解説
(『マッジマ・ニカーヤ』第118経)

なのです。

四念処を、呼吸法を瞑想の基盤に据えて、
実践していくものです。

こう言っていいと思います。


しかし、その前に、かれは、

プラーナーヤーマ(調気)
という、ヨーガ学派で説かれる
八支ヨーガの第4番目の項目と

結びつけて、それと関連づけるようにしているのが、
ミソなのです。

これによって、

ヨーガや瞑想に関心のある人を、
うまく仏教へと導くのに、
成功していると思います。


一番最初は、「カーヤーヌパッサナー(身随観。身体の洞察)」で、

ここで、このように説かれています。
======
カーヤーヌパッサナー(身体の洞察)の体系は、
インドのヨーガのプラーナーヤーマを受け継いで、
より適切かつ実用的に活用できるように
改善したものです。(p.98)
======

このように説かれているので、
ブッダダーサ比丘が、ヨーガのプラーナーヤーマを、
工夫して、仏教の考え方に合うように
アレンジしたのだ、と理解できます。

ここを読んで、驚いたのは、わたしです。

わたしの理解では、

『ヨーガ・スートラ』というのは、
パタンジャリに帰せられるのですが、

これは、おそらく、かれが、ブッダの教えの中から、
自分の思想に合うやり方を採用して、
アレンジしたもの なのです。

これは、学問的には、まだ証明するには至りませんが、
そういう感触が強くなってきていて、
おそらくこの仮説は、もっと説得力をもってくるだろうと
思っています。

ですから、
最初に、アーナーパーナサティに目をつけたのは、
もしかすると、パタンジャリだったかもしれない、
って、わたしは思っているほどなのです。

そして、

ブッダダーサ比丘が、そうとは知らずに(たぶん)
八支ヨーガの「プラーナーヤーマ」を
逆輸入して、仏教に取り込んでいる!!

おお、何と言うことだ、 という感じです。

ブッダから出てきたものですもの、
どちらも必要とあれば、互いに引き合うものがあるのでしょう。


     ◇◇◇

さらにいいますと、
わたしが、パタンジャリを尊敬するのも、

ブッダの教えを巧みに取り入れながら、
自らの立場や考えで、自分のものを、
『ヨーガ・スートラ』として出しているからです。

プルシャの教えを入れて、ブッダの教えからははずれていきますが、
自分で組み立てる能力に、インドの論理を観じます。

また、ブッダダーサ比丘も、
名前の通り、ブッダのしもべをはずれません。
「プラーナーヤーマ」を取り入れていますが、
16の階梯を進んで行くと、
どんどん仏教の教えに深く入り込んで

アニッチャ(無常)
アナッター(無我)
スンニャター(空性)
タタター(真如)
イダパッチャヤター(此縁性)

というそれぞれを体得していきます。

タタターとは、諸法実相という風に述べても良いかもしれません。

イダパッチャヤターは、この段階で、最後に説かれますので、
仮説の意味をもってくるのかなあ、などと思ったりもしています。


      ◇◇◇


この書は、初心者のための瞑想の書として、
位置づけられているようですが、

わたしには、仏法が、いかに融通無碍であるかを示す

実証の書であるように思われてなりません。


   ブッダダーサ


なんて、すばらしい名前なんでしょう。
無我の名前ですね。

確実に、一人の人の中から等流した一つの法門だなあ

って、思います。

   ブッダの法は 生きている 呼吸の中に !

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