定方晟氏「医神アスクレピオスと仏教」をご紹介
つい先日、春秋社のPR誌『春秋』2・3月号を見て
おどろきました。
定方晟(さだかたあきら)先生が
「医神アスクレピオスと仏教」
という題で、寄稿しているではありませんか。
カラスノエンドウさまに、お知らせしなくちゃ。
(ヒマカナ掲示板で話題 沸騰! わたし的にはね)
とても興味深く読みました。おもしろいです!
みなさま、機会があったらぜひ手にとってご覧ください。
簡単におはなしすると、
医神アスクレピオスの誕生物語のモチーフと
仏典『ディヴィヤ・アヴァダーナ』の中のお話がよく似ていて
仏典は、ギリシア神話のこの話から採ったものではないかと
定方先生は推定しているのです。
ギリシア神話は、こんなお話。
アポロン神の恋人だった娘コロニスが、
他の若い男性と語らっているのを
白い鳥 (アポロン神から見張り役に派遣されていた) に
告げ口されてしまいます。
アポロンは怒って、コロニスに矢を放ちます。
コロニスは死ぬ前に
「身ごもっているあなたの子を助けてくれ」と叫びます。
アポロンは、火葬の火の中から、嬰児をとりだし
子どもは救われます。
この子が、医神アスクレピオスなのです。
以上のお話の、
「火の中から胎内の子を救い出す」というこのモチーフが、
仏典の中にもあるのだそうです。
救い出すのは、ブッダです。
身ごもっている女の人に子どもの性別を聞かれて
ブッダは教えてあげます。
ジャイナ教徒の悪巧みによって、
彼女の夫は、妻に薬をあたえ、妻は死んでしまいます。
ブッダの予言がはずれたことになって
ジャイナ教徒はよろこぶのですが
ブッダは、火葬の火の中から、予言どおり
男の子を取り出すのです。
その子は、火の中から取り出されたので
「ジヨーティシュカ(燃え立つ者)」と
名づけられたとあります。
この仏教説話にアスクレピオス伝説が影響しているのではないか
という定方先生の推測なのです。
ほんと、よく似てますね。
また、アスクレピオスと薬師如来の関係についても
ふれています。
こちらは、エッセーをご覧ください。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
定方晟先生は、仏教ばかりではなくインド思想全般に
たいへん詳しい専門家ですが、
他の学者が気がつかないような、
独自の問題意識と発想と視点を具えていて
いつもたいへん啓発されます。
文化と文化がぶつかりあうところ
ここが定方先生の考察の舞台です。
だから、
アレクサンダー大王のインド遠征とか
ギリシアからイランにいたるさまざまな文化と接した
クシャン朝の興隆とか
そんな文化と文化の接点を
歴史学者の目をもって文献を解読し
宗教学者の目をもって思想を比較し
哲学者の目をもって普遍性を探るのです。
こういうことができるためには
公平・中立に文化や思想をながめられる冷静な目と
人間のその内面にせまろうとする温かい目と
両方なければならないので、
その両方を兼ね備えた
ほんとに希有な学者であると思って、感心するのです。
だから、定方先生が、何か言うときは
いつも、ちょっとわくわくしてしまう。
こんどは何かな?って。
期待を裏切らないのよねっ!
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コメント
春間さま
『カニシカ王と菩薩たち』は、一度ご紹介したことがあったかもしれません。龍樹の伝記なども載っていますので。
定方氏のものでは、ヒマカナにあげた『インド宇宙誌』(春秋社)、『異端のインド』(東海大学出版会)などがあります。
読後感教えてくださいね。
カラスノエンドウさま
ほんとに表紙にあったタイトルにビックリでしたよ。
ギリシア神話には、よくあるお話なんですか。おもしろいですね。
エジプトに伝わるアスクレピオス信仰についても、定方エッセーに載っていました。このようなアスクレピオス信仰がインドに伝わって、薬師仏を出現させたのでは?と大胆な推測しています。
> 文学者の目をもって,物語の構造を明らかにする。
決まりましたね。ぜんぜん思いつきませんでした。
投稿 管理人エム | 2007/03/15 19:40
レスが遅くなって,申し訳ありません。ちょっと,ネットにアクセスしにくい環境におりまして(汗)。春間さまにも返信をしないといけないのですが,遅れております(大汗)。
「医神アスクレピオスと仏教」,とはすごい偶然ですね。ユングのシンクロニシティみたいです。ぜひ,読んでみます(『春秋』,手にはいるかな?)。
先生の日記を読んだ限りですが,確かに似てますね。ただ,赤ん坊を火から取り出す,というモチーフは,ギリシア神話ではちょくちょくあります(デメテル,アキレウスなど)。また,同種の話がエジプトにもあったはずですので,あるいはこっちの影響かもしれません。もっとも,エジプトの話は紀元「後」のギリシア人が伝えるもので,エジプトの話なのか,ギリシア人が読み込んでしまったのか,判定の難しいところです。
もう一つ付け加えてみます,
文学者の目をもって,物語の構造を明らかにする。
とりいそぎ,ご返事まで。
投稿 カラスノエンドウ | 2007/03/15 10:44
マニカナ オット! カニシカ王と菩薩たち
という名の記憶があります
でも読んだわけではないので、今回
「空と無我―仏教の言語観」
「大乗経典を読む」
を購入することにしました
読み終えたら、感想なども含めて、
お伝えしたいと思います
他に、お勧めがあれば、
お知らせ下さい
投稿 春間 則廣 | 2007/03/14 23:34